主な土地活用である「土地を貸す」「建物を貸す」において、それぞれの概要とメリット、デメリットについて解説します。これから土地活用をしようと考えている場合は参考にしてください。
土地活用で手軽な方法が土地のみを貸すことです。 土地を貸して地代を得る方法には、郊外であれば家庭菜園や畑、資材置き場、太陽光発電施設など。都市部であれば店舗や商業施設、駐車場などになります。それぞれのメリットとデメリットを解説します。
土地を貸すことは、初期投資がかからず建物のメンテナンスも不必要です。このため郊外、都市部を問わずに手軽な土地活用といえます。借主は、立地がよければ上に建物を建てて事業を始めることも可能。 土地のみを貸しても高い収益性はあまり期待できませんが、安定性という面では良い方法といえます。
土地を貸すにあたっての注意ポイントは、借地期間が30年以上と定められていることです。居住用、アパート経営用、店舗用など、土地を借りる目的は様々ですが、どんな場合でも貸主は30年以上土地を手放すことと同等の状態が続きます。
途中で借地の状態を取りやめることはできないので、長期の土地計画を立てることが必要です。
アパートやマンション、高齢者施設などを建てて賃料を得る土地活用です。土地のみを貸す場合と比べて高い収益を得ることが可能。既に土地を所有している場合は、資金計画も比較的余裕を持てるので有利といえます。
しかし学生向けやファミリー向けなど、立地状況によって適する建物を検討することが必要不可欠。 ここではメリットとデメリットについて解説するので参考にしてください。
建物を貸す方法は、アパートの建設費など初期投資がかかりますが、満室に近い経営を続けることができれば、初期投資を数年で回収することができます。 収益性を重視した土地活用としておすすめで、将来的には安定した不労収入を得ることも可能。 修繕費など経費も多くなるアパート経営ですが、不動産所得は減価償却費や青色申告特別控除など多くの特例を受けることができます。
アパート経営は、年間の経費として固定資産税や共用部分の電気代、メンテナンス費用など出費がかさみます。 また、1年間で得た収入から経費を差し引いた所得については税金がかかるので、この点についても押さえておきましょう。
また空室が続く場合は赤字となることもあります。ハイリスクハイリターンの経営となることがあるので、十分なシミュレーションが必要です。
活用したい土地にアパートやマンションを建てて家賃収入を得る方法が、アパート・マンション経営による土地活用です。住居のニーズが高いエリアに向いている土地活用方法と言えます。メリットとデメリットを確認していきましょう。
アパート・マンション経営は、節税効果も大きいため、不動産運用で人気が高い方法のひとつです。賃貸用の建物を建てると、その土地の区分は「貸家建付地」となります。更地や駐車場と比較して、相続税や固定資産税、都市計画税が抑えられます。人気の物件で満室が継続できれば大きな収益も期待できるでしょう。また、アパート・マンションといったカタチのある資産として残せることも、大きな魅力です。収益性の高い不動産を引き継げると、様々な選択ができるので、相続人に喜ばれるでしょう。
大きなデメリットは、収益を得られない可能性があることです。つまり、場合によっては、高リスクな投資になる可能性があります。アパート・マンションとして運営する場合は、「更地に建物を建てる」「元の建物を解体して新しく建てる」「元の建物をリノベーションする」など、何らかの整備が必要です。この費用を大きくするほど、魅力的な物件になるでしょう。しかし、そもそも住宅地としてのニーズが低いエリアや競合が多く空室が多いエリアの場合、元を取れない可能性もあります。賃貸経営が上手くいかなかった場合は、売却するのも難しくなるでしょう。他の用途への転用も困難です。また、建物や設備の修理にコストがかかります。
等価交換とは、土地所有者が土地を出資して、事業者が建物を出資、出資比率に応じて完成した不動産を取得する方法です。たとえば、1億円の土地に2億円で建物を建てた場合、土地オーナーは、建物と土地のそれぞれ3分の1を得ます。
アパート・マンション経営をしたい場合、初期費用の負担がないことは等価交換の大きなメリットです。自分が提供した土地に見合う割合で利益を得られます。「買換え特例」の制度が適用されるケースなら、譲渡税を将来に繰り延べることができるので、節税対策としてもメリットがあるでしょう。貸している土地に他人が建物を建てる「貸宅地」扱いになる上、持ち分の土地も減ることから、評価額が下がり、相続税の節税にもなります。
等価交換のデメリットは、その不動産の所有権が100%自分にはないことです。活用方法を変更したくても、自分の一存では何もできません。また、建物の持ち分がありますが、建物は有限です。最終的に更地になった場合、大部分の土地の所有権が失われることは理解しておかなければいけません。事業者の出資で建物を建てるため、その土地での収益が見込めない場合は、そもそも等価交換の交渉が成立しない可能性もあります。買換え特例が適用できた場合は、減価償却費が少なくなり、収益に対する所得税や住民税が高くなることも考慮しておきましょう。
土地だけを貸す方法には、「普通借地」と「定期借地」があります。違いは、借地契約の期間です。普通借地の場合、30年以上の期間の定めがありますが、更新を断れないため半永久的に賃貸契約が継続します。定期借地は、一定期間を定めて更新はありません。メリットとデメリットを紹介します。
土地だけを貸すため、初期費用や維持管理費などのコストが必要ない点が大きなメリットです。立地条件が良ければ、大きな賃料収入が期待できます。借主が建物を建てた場合は、「貸宅地」の区分になる上に借主の権利分だけ評価額が下がるため、相続税・固定資産税の節税が可能です。定期借地には「一般定期借地」「建物譲渡特約付借地」「事業用定期借地」の3種類があります。契約期間終了後に土地が返ってくるため、大きなリスクはないでしょう。
普通借地は、30年以上の契約です。その上、正当な理由がない限り、更新を断れません。そのため、土地が半永久的に返ってこない可能性があります。定期借地は当初定めた機関で契約が終了するので、一定期間後に土地を返してほしい場合は定期借地の契約を選択することになるでしょう。契約内容をきちんと理解して選択することが大切です。また、貸す不動産が土地だけなので、アパート・マンションの家賃のような大きな収益は期待できません。
継続的に収益を得るのではなく、一度で収入を得てしまう方法も土地活用の一種と言えるでしょう。一度で収入を得る方法は、「土地の売却」です。最もシンプルな活用方法ですが、契約が成立してしまうと土地の権利は戻ってきません。メリットとデメリットを考慮して、慎重に判断しましょう。
すぐに現金化できるのは、売却の大きなメリットです。一時的に大きな現金を得られます。その現金を元手に新たな土地やマンションなどを購入するという資産活用方法もいい手段です。現金になるため、土地のしばりがなくなります。不動産ではなく、別の投資に回すことも可能です。また、遊休地にしていると、管理に手が取られる上に、固定資産税がかかってしまいます。売却して税金や面倒な管理業務から解放されるのも、大きなメリットです。
売却のデメリットは、「契約成立すると方針転換できない」という点に集約されるでしょう。土地を売却すると、以後はその土地からの収入を得るチャンスがなくなります。何かのきっかけでエリア全体のニーズが高まったとしても、もう何もできません。売却して得た収入には、譲渡税や相続税が発生する可能性があります。また、印紙税や測量費、不動産会社への仲介手数料など、様々な費用もかかるため、売却価格がそのまま得られるわけでもありません。
荷物を預けるスペースをレンタルするのがトランクルーム経営です。更地にコンテナを設置する屋外型タイプと建物を建築して部屋を貸す屋内型タイプの2種類があります。月額利用料が収入になるのが特徴。メリットとデメリットをみていきましょう。
月額利用料が収入になるスタイルは、家賃収入と同じです。しかし、住宅を建てるのとは異なり、荷物を入れるだけのトランクルームは、初期費用が大きく抑えられます。コンテナなら、1つ数十万円程度。100万円~400万円ほどの投資でスタートできるでしょう。トランクルームは構造が丈夫なので、修理や管理のコストも低いです。また、更地に戻したい場合も、コンテナを撤去すればいいだけで、解体費用などが必要ありません。転用しやすいでしょう。
トランクルームに荷物を入れるときは、車で運んでくるのが一般的です。すぐ近くに駐車場がない場合、併設駐車場の設置は必須と考えておきましょう。駐車場を作るためのスペースの確保と駐車場に整備するための費用はかかります。また、トランクルームの集客方法は、看板やビラ配り、インターネットを使う方法といった時間がかかる方法です。安定して収益が得られるまでの期間は長めに見積もっておく必要があります。トランクルームには担保価値がありません。融資を受けたいときに頼れないことは覚えておきましょう。
土地活用をしたいものの投資額は抑えたいという人に人気の選択肢のひとつが駐車場経営です。月極駐車場とコインパーキングがあります。車で来る人が多い立地など、駐車ニーズが高いエリアでは大きな収益が期待できるでしょう。メリットとデメリットを紹介します。
初期費用を抑えられるのは、駐車場経営の大きなメリットです。より初期費用を抑えたいなら、コインパーキングより月極駐車場がいいでしょう。コインパーキングは精算機やロック板などの機器が必要ですが、月極駐車場なら更地でも可能です。建物など大きなものを建設しないので、他の活用をしたい場合に転用しやすいという特徴もあります。駐車場は、車2台が停められるスペースで運営可能です。いびつな形の土地や傾斜地、狭小地でも収入を得られます。
駐車場は、建物が建っていないため、コインパーキングでも月極駐車場でも、更地と同じ税金がかかります。節税効果はないと考えましょう。住宅地など駐車ニーズがないエリアでは収入にならない反面、都市部や商業施設周辺では大きな収益につながるかもしれません。しかし、駐車ニーズが高いエリアでは、すでに競合が多く、価格競争に巻き込まれる可能性もあります。はじめたときには競合が少なくても、後から参入してきた駐車場が料金を安くすれば、結果的に見込んでいた収益より大きく減るかもしれません。
土地活用に失敗しないためには、立地に合う活用方法を選ぶことが最重要ポイントと言えます。住宅地にある土地なら、賃貸住宅経営が向いているでしょう。住宅街なら居住ニーズが高いエリアです。アパート、マンション、戸建てなど、近隣の住宅に合わせて選ぶといいでしょう。駅前の土地なら、オフィスビルや商業施設に活用すると、大きな収益を期待できます。マンション経営も選択肢のひとつです。人通りが多く便利な場所は、空室や退去リスクが低いので、安定した経営ができます。幹線道路沿いにある土地なら、店舗や商業施設、事業者への借地が向いています。
立地条件に合わせることと同じくらい大切なのは、土地活用の目的を明確にすることです。オーナーの目的によって、選ぶべき土地活用方法は全く異なります。たとえば、固定資産税を節税したいのに駐車場経営を選んでも、目的は達成できません。収益・節税・老後の資産形成・短期的な活用など、様々な目的が考えられます。活用方法を選ぶ前に、目的を明確にしておきましょう。